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ビタミン


脂溶性ビタミンのビタミンA(レチノール、α-及びβ-カロテン、β-クリプトキサンチン、β-カロテン当量並びにレチノール当量)、ビタミンD、ビタミンE(α-、β-、γ-及びδ-トコフェロール)及びビタミンK、水溶性ビタミンのビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン及びビタミンCを収載した。新たに収載したビタミンは、水溶性ビタミンのビオチンである。ビタミンの測定法の概要を表9に示した。

  1. ビタミンA

    ビタミンAは、五訂日本食品標準成分表−新規食品編−まではレチノール、カロテン及びビタミンA効力(国際単位:IU)の表示を行ってきたが、近年、ビタミンA効力に代え、レチノール当量表示にする趨勢にある。したがって本成分表では、レチノール当量(μg:マイクログラム)で表示した。日本人の食事摂取基準(2010年版)(以下「食事摂取基準2010」という。)においても、これを指標として用いている。

    1. レチノール

      レチノールは主として動物性食品に含まれる。生理作用は、視覚の正常化、成長及び生殖作用、感染予防等である。欠乏により生殖不能、免疫力の低下、夜盲症、眼球乾燥症、成長停止等が起こることが、過剰により頭痛、吐き気、骨や皮膚の変化等が起こることが、それぞれ知られている。成分値は、異性体の分離を行わず全トランスレチノール相当量を求め、レチノールとして記載した。

    2. α-カロテン、β‐カロテン及びクリプトキサンチン

      α-及びβ-カロテン並びにβ-クリプトキサンチンは、レチノールと同様の活性を有するプロビタミンAである。プロビタミンAは生体内でビタミンAに転換される物質の総称であり、カロテノイド色素群に属する。プロビタミンAは主として植物性食品に含まれる。なお、これらの成分は、プロビタミンAとしての作用の他に、抗酸化作用、抗発癌作用及び免疫賦活作用が知られている。 本成分表においては、原則として、β-カロテンとともに、α-カロテン及びβ-クリプトキサンチンを測定し、次項目の式に従ってβ-カロテン当量を求めた。なお、五訂日本食品標準成分表(以下「五訂成分表(初版)」という。)においては、これをカロテンと記載していたが、五訂増補成分表から、そのままβ-カロテン当量と表示するとともに、五訂成分表(初版)では収載していなかったα-及びβ-カロテン並びにβ-クリプトキサンチンの各成分値についても収載している。なお、一部の食品では四訂成分表の成分値を用いたものがあり、これらについては、α-及びβ-カロテン並びにβ-クリプトキサンチンを分別定量していないことから、これらの成分項目の成分値は収載していない。

    3. β‐カロテン当量

      β-カロテン当量は、次式に従って算出した。

      β‐カロテン当量(μg) = β‐カロテン(μg) + 1/2 α‐カロテン(μg) + 1/2 β‐クリプトキサンチン(μg)
    4. レチノール当量

      五訂増補成分表からレチノール当量の算出については、日本人の食事摂取基準(2005年版)(以下「食事摂取基準2005」という。)がレチノール当量の算出方法を変更したことを踏まえ、これとの整合性の確保等の観点から、次式に基づきレチノール当量を算出している11)

      レチノール当量(μg) = レチノール(μg) + 1/12 β‐カロテン当量(μg)

      なお、β-カロテン当量及びレチノール当量の算出に当たっては、分析値を用い、数値の表示方法における数値の丸め方に基づき成分値を決定した。したがって、β-カロテン当量及びレチノール当量は、本成分表の収載値から算出した値と一致しない場合がある。

  2. ビタミンD

    ビタミンD(カルシフェロール)は、カルシウムの吸収及び利用、骨の石灰化等に関与し、植物性食品に含まれるビタミンD2(エルゴカルシフェロール)と動物性食品に含まれるD3(コレカルシフェロール)がある。両者の分子量は異なるが、ヒトに対してほぼ同等の生理活性を示す。ビタミンDの欠乏により、小児のくる病、成人の骨軟化症等が起こることが知られている。 なお、プロビタミンD2(エルゴステロール)とプロビタミンD3(7−デヒドロコレステロール)は、紫外線照射によりビタミンDに変換されるが、小腸での変換は行われない。 ビタミンDについても、ビタミンAと同様、五訂日本食品標準成分表−新規食品編−まではビタミンD効力(国際単位:IU)の表示を行ってきたが、近年の趨勢に従い重量(μg)で表示した。

  3. ビタミンE

    ビタミンEは、脂質の過酸化の阻止、細胞壁及び生体膜の機能維持に関与している。欠乏により、神経機能低下、筋無力症、不妊等が起こることが知られている。 食品に含まれるビタミンEは、主としてα-、β-、γ-及びδ-トコフェロールの4種である。五訂成分表(初版)においては、項目名をそれまで用いていたビタミンE効力に代えてビタミンEとし、α-トコフェロール当量(mg)で示していたが、食事摂取基準2005が、これまでのα-トコフェロール当量に代えてα-トコフェロールを指標にビタミンEの摂取基準を策定したことを踏まえ、食事摂取基準2005との整合性の確保等の観点から、五訂増補成分表からビタミンEとしてトコフェロールの成分値を示すこととし、α-、β-、γ-及びδ-トコフェロールを収載している12)。食事摂取基準2010においても、α-トコフェロールを指標として用いている。

  4. ビタミンK

    ビタミンKには、K1(フィロキノン)とK2(メナキノン類)があり、両者の生理活性はほぼ同等である。ビタミンKは、血液凝固促進、骨の形成等に関与している。欠乏により、新生児頭蓋内出血症等が起こることが知られている。成分値は原則としてビタミンK1とK2(メナキノン-4)の合計で示した。ただし、糸引き納豆(食品番号04046)、挽きわり納豆(同04047)、五斗納豆(同04048)、寺納豆(同04049)、金山寺みそ(同04061)及びひしおみそ(同04062)ではメナキノン-7を多量に含むため、メナキノン-7含量に444.7/649.0を乗じ、メナキノン-4換算値とした後ビタミンK含量に合算した。

  5. ビタミンB1

    ビタミンB1(チアミン)は、各種酵素の補酵素として糖質及び分岐鎖アミノ酸の代謝に不可欠である。欠乏により、倦怠感、食欲不振、浮腫などを伴う脚気(かっけ)、ウエルニッケ脳症、コルサコフ症候群等が起こることが知られている。成分値はチアミン塩酸塩相当量で示した。

  6. ビタミンB2

    ビタミンB2(リボフラビン)は、フラビン酵素の補酵素の構成成分として、ほとんどの栄養素の代謝にかかわっている。欠乏により、口内炎、眼球炎、脂漏性皮膚炎、成長障害等が起こることが知られている。

  7. ナイアシン

    ナイアシンは、体内で同じ作用を持つニコチン酸、ニコチン酸アミド等の総称であり、酸化還元酵素の補酵素の構成成分として重要である。生体中に最も多量に存在するビタミンである。欠乏により、皮膚炎、下痢、精神神経障害を伴うペラグラ、成長障害等が起こることが知られている。成分値はニコチン酸相当量で示した。なお、ナイアシンは、食品からの摂取以外に、生体内でトリプトファンから一部生合成され、トリプトファンの活性はナイアシンの1/60とされている。

  8. ナイアシン当量

    食事摂取基準(2015年版)で用いられているナイアシン当量(NE)を考慮して、追補2016年においては、次式のように、ナイアシンとトリプトファンとからナイアシン当量を算出した。

    ナイアシン当量(mg NE)=ナイアシン(mg) + 1/60トリプトファン(mg)

    一方、トリプトファン量が未知の場合には、たんぱく質量の約 1 %をトリプトファン量とみなして、次式で計算した。

    ナイアシン当量(mg NE)=ナイアシン(mg) + たんぱく質量(g)×1000 (mg/g)×1/100×1/60

    なお、ナイアシン当量は、各成分の分析値の四捨五入前の数値から算出した。したがって、成分表2015年版(七訂)及び追補2016年本成分表の収載値から算出した値と一致しない場合がある。 利用上の便を図るため、成分表2015年版(七訂)に収載された全食品のナイアシン当量を第5部に示した。

  9. ビタミンB6

    ビタミンB6は、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン等、同様の作用を持つ10種以上の化合物の総称で、アミノトランスフェラーゼ、デカルボキシラーゼ等の補酵素として、アミノ酸及び脂質の代謝、神経伝達物質の生成等に関与する。欠乏により、皮膚炎、動脈硬化性血管障害、食欲不振等が起こることが知られている。成分値はピリドキシン相当量で示した。

  10. ビタミンB12

    ビタミンB12は、シアノコバラミン、メチルコバラミン、アデノシルコバラミン、ヒドロキソコバラミン等、同様の作用を持つ化合物の総称である。その生理作用は、アミノ酸、奇数鎖脂肪酸、核酸等の代謝に関与する酵素の補酵素として重要であるほか、神経機能の正常化及びヘモグロビン合成にも関与する。欠乏により、悪性貧血、神経障害等が起こることが知られている。成分値はシアノコバラミン相当量で示した。

  11. 葉酸

    葉酸は補酵素として、プリンヌクレオチドの生合成、ピリジンヌクレオチドの代謝に関与し、また、アミノ酸及びたんぱく質の代謝においてビタミンB12とともにメチオニンの生成、セリン−グリシン転換系等にも関与している。特に細胞の分化の盛んな胎児にとっては重要な栄養成分である。欠乏により、巨赤芽球性貧血、舌炎、二分脊柱を含む精神神経異常等が起こることが知られている。

  12. パントテン酸

    パントテン酸は、補酵素であるコエンザイムA及びアシルキャリアータンパク質の構成成分であり、糖及び脂肪酸の代謝における酵素反応に広く関与している。欠乏により、皮膚炎、副腎障害、末梢神経障害、抗体産生障害、成長阻害等が起こることが知られている。

  13. ビオチン

    ビオチンはカルボキシラーゼの補酵素として、炭素固定反応や炭素転移反応に関与している。長期間にわたり生卵白を多量に摂取した場合に欠乏症がみられ、脱毛や発疹等の皮膚障害、舌炎、結膜炎、食欲不振、筋緊張低下等が起こる。

  14. ビタミンC

    ビタミンCは、生体内の各種の物質代謝、特に酸化還元反応に関与するとともに、コラーゲンの生成と保持作用を有する。さらに、チロシン代謝と関連したカテコールアミンの生成や脂質代謝にも密接に関与している。欠乏により壊血病等が起こることが知られている。食品中のビタミンCは、L-アスコルビン酸(還元型)とL-デヒドロアスコルビン酸(酸化型)として存在する。その効力値については、科学技術庁資源調査会からの問い合わせに対する日本ビタミン学会ビタミンC研究委員会の見解(昭和51年2月)に基づき同等とみなされるので、成分値は両者の合計で示した。

参考文献
数値の表示方法
表9 ビタミンの測定法
成分 試料調製法 測定法
レチノール けん化後、不けん化物を抽出分離、精製 ODS系カラムと水−メタノール混液による紫外部吸収検出−高速液体クロマトグラフ法
α-カロテン、 β-カロテン、β-クリプトキサンチン エタノール抽出後、 けん化、抽出 ODS系カラムとクロロホルム−メタノール溶液による可視部吸収検出−高速液体クロマトグラフ法
チアミン (ビタミンB1 酸性水溶液で加熱抽出 ODS系カラムとメタノール−0.01 mol/Lリン酸二水素ナトリウム−0.15 mol/L過塩素酸ナトリウム混液による分離とポストカラムでのフェリシアン化カリウムとの反応による蛍光検出−高速液体クロマトグラフ法
リボフラビン (ビタミンB2 酸性水溶液で加熱抽出 ODS系カラムとメタノール−酢酸緩衝液による蛍光検出−高速液体クロマトグラフ法
アスコルビン酸 (ビタミンC) メタリン酸溶液で摩砕抽出、酸化型とした後、オサゾン生成 順相型カラムと酢酸−n-ヘキサン−酢酸エチル混液による可視部吸光検出−高速液体クロマトグラフ法
カルシフェロール (ビタミンD) けん化後、不けん化物を抽出分離 逆相型カラムとアセトニトリル−メタノール混液による分取高速液体クロマトグラフ法のあと、順相型カラムと2-プロパノール−n-ヘキサン混液による紫外部吸収検出−高速液体クロマトグラフ法
トコフェロール (ビタミンE) けん化後、不けん化物を抽出分離 順相型カラムと酢酸−2-プロパノール−n-ヘキサン混液による蛍光検出−高速液体クロマトグラフ法
フィロキノン メナキノン類 (ビタミンK) ヘキサン抽出後、精製 還元カラム−ODS系カラムとエタノール−メタノール混液による蛍光検出−高速液体クロマトグラフ法
ナイアシン 酸性水溶液で加圧加熱抽出 LactobacillusATCC8014による微生物学的定量法
ビタミン<>B6 酸性水溶液で加圧加熱抽出 Saccharomyces cerevisiae ATCC9080による微生物学的定量法
ビタミンB12 緩衝液及びシアン化カリウム溶液で加熱抽出 Lactobacillus delbrueckiisubsp.lactisATCC7830による微生物学的定量法
葉酸 緩衝液で加圧加熱抽出後、プロテアーゼ処理、コンジュガーゼ処理 Lactobacillus rhamnosusATCC7469による微生物学的定量法
パントテン酸 緩衝液で加圧加熱抽出後、アルカリホスファターゼ、ハト肝臓アミターゼ処理 LactobacillusATCC8014による微生物学的定量法
ビオチン 酸性水溶液で加圧加熱抽出 LactobacillusATCC8014による微生物学的定量法